ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2018年5月に読んだ本(2018年6月2日更新)

でぶぶの読んだ本考察|2018年5月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・PC遠隔操作
作者・神保哲生
出版社・光文社
評価・8点

片山祐輔氏(通称・ゆーちゃん)が数年前に世を騒がした劇場型事件であるPC遠隔操作事件に関するノンフィクション。この本は下手なミステリー小説より面白い!報道による断片的な知識しかなかった事件がかくも深いものだったのかという新鮮な驚きがある。多少同じ内容が繰り返されて冗長になっている部分もあるが、文句なしにおすすめの一冊である。



書名・奇想、天を動かす
作者・島田荘司
出版社・光文社文庫
評価・7点

御手洗シリーズではないが、御手洗シリーズばりのトリックが炸裂する傑作長編。夜行列車の後部車両から前部車両へ客席の通路を狂ったように踊りながら進むピエロ。そのピエロの死体が車内のトイレで発見されるが、トイレのドアを一瞬閉めた間に消失するピエロの死体、轟音と共に宙に浮かび上がる列車、そして天を衝くような白い巨人・・・この訳の分からん怪奇現象と浅草で消費税12円を請求されたことに腹を立て老人が女店主を刺殺するという事件がリンクする。相変わらずトリックはかなり強引だが「奇想、天を動かす」というおおそれたタイトルに違わぬ傑作と言えよう。



書名・木製の王子
作者・麻耶雄嵩
出版社・講談社ノベルス
評価・3点

お馴染みの摩耶さん。如月鳥有、名探偵・木更津などお馴染みのキャラが登場する。比叡山の山奥の奇妙な屋敷で起きた殺人事件のお話なのだが、関係者のアリバイが時刻表なみに細かくてややこしく、最早アリバイを崩そうという気もうせる(笑)やっぱり摩耶さんの初期作品群は挑戦的過ぎると思うぞ。



書名・名探偵・木更津悠也
作者・麻耶雄嵩
出版社・光文社ノベルス
評価・5点

麻耶さんにしては意外とまっとうな内容(笑)一応名探偵の木更津が活躍する短編四編が収録されている。名探偵・木更津とワトソン役の香月の微妙な関係性が面白く、読みやすい内容も含め麻耶作品初心者向けと言えるのではなかろうか。



書名・犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼
作者・雫井脩介
出版社・双葉社文庫
評価・6点

エンタテイメント大作「犯人に告ぐ」の続編。前作では警察側の巻島捜査官が中心の内容だったが、今回はどちらかと言えば犯人サイドが中心。「大日本誘拐団」とふざけた名前を名乗り誘拐事件をビジネス化しようとする犯人グループと巻島グループの頭脳戦はなかなか面白い。前作には多少劣るとはいえ、雫井作品では当たりの部類である。ハードカバーで買うと「ちょっと」という感じだが、文庫で買うと「良かった」というようなタイプの本(どんなんやねん!)。



書名・飛田ホテル
作者・黒岩重吾
出版社・ちくま文庫
評価・7点

昭和の大阪において、光の当たらない暗がりで悲しく交わる男女の情と性を描く傑作短編集。1960年前後の作品だが古びておらず、「悲しみ」というよりは「哀しみ」を感じるような良い小説である(読者は選ぶが・・・)。



書名・用兵思想史
作者・田村尚也
出版社・作品社
評価・6点

用兵(戦略・戦術・作戦)に関する入門書。古代から現代における用兵思想の流れを解説されており、知的好奇心が満たされる一冊である。



書名・八九六四
作者・安田峰俊
出版社・角川書店
評価・9点

「八九六四」すなわち天安門事件に関するルポ。数年かけて様々な立場で天安門に参加した(関連した)人を取材した力作であり、若く中国語が堪能で右左のイデオロギーにおかされていない(多分ね)安田さんだからこそ書きえた作品だ。何が正しくて、何が間違いで、何が正義で何が悪なのか、民主主義が正しくて共産主義が間違っているのか、世界や民主主義がそれほど単純でないことを考えさせられる。中国に関心がある人・関わりがある人・今後関わる予定がある人は読んでおくべきだと思う。現時点での安田さんの最高傑作と言えよう。



書名・「天安門」十年の夢  
作者・譚ろ美
出版社・新潮社
評価・7点

「八九六四」で少し触れられていたので興味を持ち購入。在日中国人でノンフィクションライターの譚さんによる天安門事件のノンフィクション。事件そのものと言うより、事件の中心人物のその後を追った作品である。「八九六四」では有名無名様々な立場の人物が登場したが、この作品では4人だけ、蘇暁康、張伯笠、岳武、柴玲という天安門広場でデモの指揮側にいた著名人の事件後10年間の軌跡を辿る。特に天安門広場防衛指揮部の総指揮官だった柴玲に関する記述は色々と考えさせる。「民主の女神」と言われた20代前半の果敢で純粋だった少女が、天安門から逃れ亡命してから毀誉褒貶にまみれていく姿からは、人間というもののどうしようもない美しさ・愚かさ・哀しさを感じさせる。最後には客観的であるべき著者までが柴玲のどうしようもない深み(人間的な深みというわけではない)に呑み込まれていってしまうのだ・・・。柴玲は6月4日に死んでいれば伝説となり永遠の偶像となったのかもしれない。しかし人間はどうしようもない弱さを内包している生き物であり、彼女のその後の生き方を誰が批判できようか。人は誰もがゲバラのように死ぬまで革命家として生きれるわけではないのだ。