ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2021年9月・10月に読んだ本(2021年11月8日更新)



でぶぶの読んだ本考察|2021年9月・10月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・。今回は殊能将之さんの「美濃牛」「黒い仏」、倉井眉介の「怪物の木こり」他にも佐藤正午さん李龍徳さんなどを読みましたね。20年ぶりの高見広春(バトルロワイヤル)、大分量に疲れ果てた村上春樹(1Q84は文庫本だと6冊)などかなり読みました。

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・ 修羅を生きる
作者・梁石日
出版社・幻冬舎文庫
評価・7点

「夜を賭けて」「血と骨」などの在日朝鮮人作家・ヤンソギルの自伝的な内容。戦後すぐのただれた時代といえなかなかにエグい。時代(戦後のまずしい時代)、環境(在日朝鮮人という当時今より差別されていた階層)、地域(大阪)、家庭(親父がヤバすぎ)などがあいまって壮絶である。ヤンソギルの小説も十分壮絶なのだが、現実は小説より奇なり、ということなのだろうか。あまり女性にすすめてはいけない。



書名・ガケ書房の頃 そしてホホホ座へ
作者・山下賢二
出版社・ちくま文庫
評価・6点

かつて存在した京都の名物書店・ガケ書房の店主山下さんが書く、山下さんの半生+ガケ書房の開店から閉店までの物語。行ったことはないものの、ガケ書房の名前と独特の車が突っ込んでいる外観は知っていた(全国の本好きが名前くらいは聞いたことがある本屋だったと思う)。ただし、これほどの有名店でもここまで経営に苦労し(というか借金まみれ)、店をたたまざるをえなくなった、という事実に書店という業界の厳しさを感じる。移転・名前が変更したホホホ座(ガケ書房のままでも良かった気はするが・・・)が成功せんことを一本好きとしては願ってやまない。



書名・沈黙のパレード
作者・東野圭吾
出版社・文春文庫
評価・5点

ガリレオシリーズ。若い女性の遺体が発見され逮捕されたのは23年前の少女殺害事件で逮捕されたが黙秘を貫き釈放されてしまった男だったが、(若い女性の家族が今も住む)町のパレードの日に、その男が殺害される・・・。序盤までは東野さんの久々の傑作か?ガリレオシリーズでいえば容疑者Xや聖女の救済に並ぶ作品になるかも、と思っていたが、だんだんと尻すぼみであった。今風の次から次への事実が発覚し最後に複雑なパズルが完成するかのような作品も悪くはないのだけど、もうちょっと芯の通った荘厳な感じの作品にでもできたのではないかな、と思う。決して悪くはないのだけどね・・・。



書名・死にたくなったら電話して
作者・李龍徳
出版社・河出文庫
評価・6点

紀伊國屋書店でたくさん平積みされていたので知らない作家だったが購入してみた。作者は在日韓国人、舞台は大阪の十三、浪人生の徳山と売れっ子キャバ嬢で得体の知れない初美の物語。文章に力があり、初美の独特のキャラもあいまって、「これはすごい作品を読んでいるんではないか」と思ったが、だんだんと勢いが落ちていき尻すぼみという印象。ただ、この作者の新たな文庫本が出たらもう一冊くらい読んでみようと思った。



書名・草にすわる
作者・白石一文
出版社・文春文庫
評価・5点

短編集。「草にすわる」表題作。ニートの洪治と年上訳ありの曜子の何とも無為な付き合いの日々。普通。「花束」新聞業界ネタ。出版業界にいたときに白石さんが仕入れたネタだろうか・・・普通。「砂の城」老作家の心象風景。普通。「大切な人へ」ベタベタな恋愛もの。短編はこれくらいベタでもよいのかもしれない。「七月の真っ青な空に」恋愛ものだが微妙。全体として普通な感じ。白石さんは他にもっと良い短編集があるので、読むならそちらを先に読んだほうがよいように思う。





書名・メデイウム 霊媒探偵城塚翡翠
作者・相沢沙呼
出版社・講談社文庫
評価・7点

ミステリー系の各賞と総ナメにした作品。表紙やタイトルがキャラモノっぽかったので敬遠していたのだが、ここまで話題になってしまうと、なんちゃってミステリーファンとして読まないわけにはいかない。読み終わっての感想は「確かに話題になるだけあるな、読んで損はない作品」という感じ。メインのトリック?というか謎は、ミステリファンからすれば分かりやすいものかもしれないが(酔っ払っていた私は気づかなかった・・・素面でも気付いたかは謎だが・・・)、ここまでの物語を構成した苦労を考えると頭が下がる(整合性など相当苦労したと思う)。ただ、最終話にもう少し格調があれば8点をつけただろうな、とも思う。



書名・凍える島
作者・近藤史恵
出版社・創元推理文庫
評価・4点

サクリファイスなどで有名な近藤さんのデビュー作にして鮎川哲也賞受賞作。男女8人が休暇を過ごす無人島で起こる連続殺人事件という古典的パターンの作品。コーヒーカップをコオヒイカップと書くなど言葉の使い方やチョイスが少し古びた感じで執筆当時(90年代)20代前半とは思えない昭和の香りがする。ストーリーはこのジャンルとしては可もなく不可もなくという感じである。読みやすいが強いインパクトはない。



書名・白光
作者・連城三紀彦
出版社・光文社文庫
評価・6点

ごく普通の家族、その中で幼い女の子が殺害される。その殺人事件をきっかけにあばかれる家族の秘密、そして誰が女の子を殺したのか?・・・妻・夫・娘・妻の妹(殺された女の子の母)・妻の妹の夫・夫の父などの視点から物語が語られるが、多くの視点があればそれぞれの視点にそれぞれの事実があり、同じ事件に対しても真実は一つではない。 (表面上は)矛盾する告白によって構成された物語は見事な技巧と言えよう。



書名・ドリーミング・オブ・ホーム&マザー
作者・打海文三
出版社・光文社文庫
評価・5点

SFなのか、ミステリーなのか、純文学なのか、ハードボイルドなのかよく分からん小説。打海さんの小説は、読み始めると凄く良い「匂い」がするのだけど、最後のほうにはそれがなくなってしまうという感じが多い。何て言うのか舞台装置や文章は好きなのだけど・・・って感じだろうか・・・。



書名・人参倶楽部
作者・佐藤正午
出版社・光文社文庫
評価・7点

深夜営業の酒場人参倶楽部とそのマスターを中心に織りなす男女の人間模様。短編集。こんなのを読んでると「佐藤正午の本質は短編にあり」と思ったりするのだが・・・。



書名・スペインの雨
作者・佐藤正午
出版社・光文社文庫
評価・5点

90年前後に書かれた短編集。9編収録されているがルームメイトやクラスメイトあたりが好きかな。そんなに気合を入れずに読むべきか。



書名・バトル・ロワイヤル 上下
作者・高見広春
出版社・幻冬舎文庫
評価・8点

再読。10代の頃にベストセラーとなった問題作。ご存じの通り政府によって隔離された無人島で中学生1クラスが殺し合いをさせられるというファッキンな内容である。本作の発表後に類似の作品が多数出たこともあって新鮮味は薄れており、また内容も荒唐無稽であるがエンタテイメント作品としては見事な出来で、おっさんになった今でも一気に読むことができた。キワモノ扱いされがちだが高見氏の文章力はかなりのもので、他の作品も読んでみたいのだが世に発表されているのは本作のみ。本作によって莫大な印税が入って満足されたのか(小説が売れただけでなく漫画化・映画化もされたしなぁ・・・)、それとも不慮の何かがあったのか・・・。



書名・美濃牛
作者・殊能将之
出版社・講談社文庫
評価・6点

「ハサミ男」で名を売った殊能氏の作品。殊能氏のシリーズ探偵である石動が初登場した作品でもある。岐阜県の山村を舞台に横溝正史ばりの連続殺人が起こる。奇跡の泉、謎の洞窟、歩くことができない一族の長老という舞台装置の上に首なき死体というお約束(笑)文章も上手くリーダビリティ抜群なのだが、肝腎のミステリーの謎(解決とも言う)がイマイチ魅力的ではなかったか。一気読みできる700ページの大作だが少し残念な気はする。



書名・黒い仏
作者・殊能将之
出版社・講談社文庫
評価・3点

美濃牛に続く、名探偵?石動が活躍するシリーズ第二作。謎の仏像探しを依頼された石動が福岡に趣き、一見まっとうな(少なくとも前作の美濃牛程度には)ミステリが展開されのだなと思わせられるのだが、途中から「うん?」というような記述が増えていき、本作が真っ当なミステリでないことが発覚する(笑)バカミスというべきか、SFというべきか、伝奇小説というべきか発表当時ミステリファンから毀誉褒貶だったとうのも理解できすぎるほどできる。個人的には「面白くないわけではないのだが、このシチュエーションでこの展開をやる必要はあったのか?」と思う。ネット上では肯定的な意見も多かったが私はあまり高く評価できない。



書名・怪物の木こり
作者・倉井眉介
出版社・宝島社文庫
評価・5点

このミステリーがすごい!大賞(新人賞)受賞作。弁護士かつサイコパスかつ殺しの常習犯・二宮彰といういささかぶっ飛んでおり(設定が)チープな感じの男が主人公である。その主人公が斧を持ち怪物マスクを被った男に襲撃されるという漫画的・ラノベ的な展開で幕を開ける(サイコパスVS怪物である)。深みや感動や物語から得るものは何もないが、キャラが分かりやすく(深みがないとも言えるかもしれないが・・・)文章も読みやすく、リーダビリティはなかなかのもの。ネット上ではボロカスに酷評されていたが、そこまで悪いとは思わない。ミステリ慣れしていない若い人が手にとるにはちょうど良い本ではないだろうか。内容以上にタイトルや設定が上手く、書店で何となく手にとったという読者が多そうである。



書名・1Q84 6冊
作者・村上春樹
出版社・新潮文庫
評価・5点

新潮文庫の村上春樹を読もうキャンペーンはついに1Q84に突入。青豆、天吾、ふかえり、空気さなぎ、リトルピープル、牛河・・・相変わらず見事なネーミングセンスだが、正直何を書きたいのかよく分からんし、無駄に長い・・・(半分くらいに分量に出来たのではなかろうか)。聖書の予言書というわけでもないのだから、もう少し短く分かりやすく書いてくれてもよいような気はする。個人的に胸を衝かれるような内容もあったし、もう一度読めば色々と意味深な部分も理解できるのかもしれないが、文庫6冊を再読する元気はない。・・・次は騎士団長か・・・タイトルからして何となくヤバそうである(笑)