ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2018年10月に読んだ本(2018年10月29日更新)

でぶぶの読んだ本考察|2018年10月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・少数株主
作者・牛島信
出版社・幻冬舎
評価・3点

「株式会社の99.8%は、非上場である。非上場企業の株が動き出した時、日本経済は瞬く間に復活する」という感じの小説である。東大法学部出て企業向けの弁護士をやってる作者の牛島さんゆえ設定は興味深いし、同族会社の少数株の使い方は興味深く読んだ。ただし、牛島さんには小説家としての腕はないと思う。主人公の大木弁護士(牛島さんの分身か?)と副主人公の高野の随所に挟まれる会話は発酵しすぎて臭すぎる。まあジジイ二人の会話部分(かなりの部分を占めるが・・・泣)を除いては、情報小説・法律小説として読めるであろう。



書名・吉原で生きる
作者・吉岡優一郎
出版社・彩図社
評価・7点

どうした彩図社?胡散臭い本ばっかり出版してたのに、最近ちょっと興味深い本も出すようになったやないか!この本は単なる風俗ルポでなく吉原という地域に働く人・住む人・魅せられた人などの群像ルポだ。ソープ嬢だけでなく、飲食店の店主、風俗嬢向け講師、ソープの店長やボーイ、自治体幹部、風俗カメラマン、風俗雑誌編集者、タクシー運転手など吉原に関わってきた様々な人間への取材から吉原という街の移ろい、吉原という街の今をとらえた良書である。吉原に行ったことがない人でも興味深く読める本だ。



書名・ルポ西成 七十八日間のドヤ生活
作者・國友公司
出版社・彩図社
評価・7点

筑波大学を卒業しながら就職も決まらない放浪者気質の著者が大阪西成のあいりん地区に沈没するという突撃体験型ルポである。著者の見たモノ感じたコトがそのまま書かれるだけなので、あまり内容に深みはない(インタビュー等も随所にあるが、インタビュー相手が基本手的にシャブ中、アル中、ギャンブル狂、色情魔とかなので発言の正確性は全く担保されていない)。それでも興味深く読めるのはあいりん地区が現在日本の中で「かなり浮いている」ゆえであろう。浮いているがゆえに、見たこと聞いたことをそのまま記述するだけで動物園の珍獣を見ているような気分になるのである。ていうか登場人物(あいりん地区の住人)ほとんどシャブ中じゃねーか!



書名・ロゴスの市
作者・乙川優三郎
出版社・徳間文庫
評価・5点

「大学の同級生であった弘之と悠子。共に英語を学んだ二人だが、弘之は翻訳家に、悠子は同時通訳の道を歩んでいく。お互いに愛し合う二人だが、どうようもなくすれ違っていく・・・」という感じで、文章に品があってとても綺麗なお話である。なお、島清恋愛文学大賞という聞き慣れない文学賞を受賞している。



書名・征途
作者・佐藤大輔
出版社・中央公論社
評価・8点

架空歴史小説。私は若い頃いくらか架空歴史小説(太平洋戦争モノ、戦国時代モノ、三国志モノなどである)を読んだが、この作品はちょっと格が違うと感じた。題材そのものは「レイテ沖海戦で大和などの水上部隊がレイテ湾突入を果たせばどうなったか」というありふれたものなのであるが、全体のリアリティ、壮大さ、面白さが段違いなのである。著者の「皇国の守護者」も読んだが、やはりこの著者は「モノが違う」のであろう。「架空歴史小説」という評価されがたいジャンルであったこと、未完結の作品が多いことなどが著者の知名度向上を阻んだのであろうか。著者の架空歴小説はこの征途以外にも多数出版されているが、この征途以外はまともに完結していないとのこと。果たして手を出してよいものか・・・悩みは尽きぬ。



書名・止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記
作者・松本麗華
出版社・講談社プラスアルファ文庫
評価・4点

アーチャリーの名で有名なオウム真理教麻原の三女の自伝である。幼少の教団外で暮らしていた時代、上九一色村のサティアン時代、オウム崩壊の時代、そして現在を著者の目線で描く。あくまで著者の目線なので客観性はない。麻原は著者の父親であり、著者にとっては良い父親であったのは事実であろうし、近年の著者の発言である「オウムは全て悪いわけではなかった」というのも当たり前の事実である(そもそも全てが悪であれば、あれほどの人は集まらない。ナチスドイツにだって良い政策は多々あったのだ)。ただし、オウムの暴走は紛れもない事実であるし、この本の著者の主張には正直共感できない部分の方が多かった。オウム事件に関する貴重な内部資料ではあるとは思うが。



書名・さいはての中国
作者・安田峰俊
出版社・小学館新書
評価・6点

なぜか超右寄り雑誌SAPIOに連載されていた記事をまとめたものであるが、特に右寄りの内容でなく普段の安田節である。「三和大神」と呼ばれるネトゲ廃人、広州のリトルアフリカ、習近平の聖地巡礼、噂の雄安地区、鬼城など適当な好奇心の赴くままに現地に飛ぶ安田氏、「中国系ネタルポライター」の面目躍如である。「難しいことなんかええから、面白くて、知的好奇心が満たされたらええやん」という感じのノリは大好きである。



書名・「身体を売る彼女たち」の事情
作者・坂爪真吾
出版社・ちくま新書
評価・7点

副題は「自立と依存の性風俗」。近年よく出版される風俗体験ルポ的な本ではなく「なぜ彼女たちはJKリフレやデリヘルで働くのか?そしてどうしてそこから抜け出せないのか?」という問いに真正面から取り組んだ力作である。著者は風俗店で働く女性の相談窓口の一つ「風テラス」(法テラスのもじりであろう)の立ち上げ人の一人であって、現場に出ている人間であるため、二次情報でなく現場の一次情報に基づき本書は記述されている、それゆえに本書は強い説得力と生生しさを持つ。「性風俗は搾取ではなく共助である。共助であるからこそ、搾取以上に悲惨なことが現場で起こりうるのだ」という部分からは性風俗の(従事者にとっての)仄かな光と底知れない闇の深さを感じさせた。また、このような題材でありながらインタビューなどを取り入れ「読ませる本」に仕立て上げた著者の力量はなかなかのものである。



書名・性風俗のいびつな現場
作者・坂爪真吾
出版社・ちくま新書
評価・7点

上記作品の2年前に出版された本、上記作品を読んでこの作者に興味を覚えたので購入。やはり力作であった。一般的な論調で言えば「風俗」という仕事は、功罪の罪の部分ばかり強調される。この本においては風俗の罪だけでなく功の部分にも光を当てる。風俗と生活保護などの社会福祉の類似性など「なるほどそういう見方があるのか」と思わせる部分も多い。ただ、風俗には確かに功の部分もあれど、様々なリスク、そして功の部分はあくまで限定的で限界があることも理解した。まじめな本ではなるが、「障害者によるデリヘル起業」「妊婦が働く母乳風俗」「激安店」「地雷専門店」「熟女専門店」などの実態・ルポもあり、とりあえずは野次馬的興味で手にとっても問題ないであろう(そのような読み方でも一定の好奇心は満たされると思う)。



書名・青線 青春の記憶を刻む旅
作者・八木澤高明
出版社・集英社文庫
評価・5点

青線〜すなわち非合法売春地帯〜などの色街に関するルポ。横浜の黄金町、沖縄の真栄原など日本に数多く存在した青線、しかし近代化と共に姿を消しつつある(というよりお上に取り潰されていっている)。そんな滅び行く日本全国の青線地帯を巡るという非常に興味深い題材なのだが、夢中になって読む、というレベルには達していない。各青線を巡る旅という題材上仕方ないのかもしれないが、それぞれに関する現在の記述が短く表面的である。現在の記述部分に比べ歴史的背景部分の記述がそれなりの分量あるのだが、その部分が資料的であまり面白くない、また現在との結びつきにしても結構強引な気がするのだが・・・。題材が良かっただけに「惜しい」という感じである。



書名・ギブ・ミー・ア・チャンス
作者・荻原浩
出版社・文春文庫
評価・7点

大衆作家として地位を固めつつアル荻原さんのハートフルユーモア短編集。何者かになろうとあきらめ悪く挑み続ける、不器用な8人の若者(中年含む)の姿はとても爽やかである。「こういうのを書かしたら荻原さんに並ぶ人はいないな」と思わせられる。タケぴよ出動!空気を読むな。空気を乱せ。