ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2019年5月に読んだ本(2019年6月7日更新)

でぶぶの読んだ本考察|2019年5月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・ブラック・ドッグ
作者・葉真中顕
出版社・講談社文庫
評価・5点

パニック小説かと思ったが、社会派パニック小説という感じ。過激派動物愛護団体DOGが日本で行われているペット販売イベントの会場に乗り込み会場を封鎖、そこで恐怖の動物テロを起こす。主要キャラでも次々と殺される容赦ない展開が売りか(笑)。最後の終わり方からしてシリーズ化するんかな。



書名・龍臥亭事件 上下
作者・島田荘司
出版社・光文社文庫
評価・6点

再読。高校時代に読んだのだが、実は最初に読んだ島田荘司がこの龍臥亭事件。今考えれば御手洗シリーズなのに御手洗潔がほぼほぼ登場しない(石岡くんが主人公)この作品を何故選んだのか謎である。内容的に正直欠点も多い作品だと思うが、まだ筆がのっている時期の島田荘司ゆえよく分からないまま引き込まれてしまい、その後御手洗シリーズに次々と手を出していくことになる。内容は、岡山県の山間部の村に鎮座する龍臥亭という奇怪な旅館が舞台となり、かなり不可解な連続殺人事件が起こる。御手洗潔が日本を去ってから横浜で逼塞していた石岡くんがこの事件に巻き込まれ、何とか解決するという石岡くんの成長ストーリー的な話でもある。トリックは相変わらずハチャメチャだし(現実的に可能なのか?)、途中で200ページにわたって津山30人殺しをもとにした話が挿入されるなど混沌としまくりであるが、その分島田荘司の筆力・豪腕が光るのである。



書名・戦略で読み解く日本合戦史
作者・海上友明
出版社・PHP新書
評価・6点

古今の戦史、東西の兵書を参照して戦略・戦術に迫るなかなか硬質な書。それぞれの合戦を図面つきで解説するようなよくある本とは違い、それぞれの合戦は戦略・戦術を解説するための凡例にすぎないのだ。「源義経は愚将」と言い切るなど切れ味はなかなかで受け入れられない人もいるだろうが、これくらいとんがっていたほうが本は面白いのだ。



書名・平成史
作者・佐藤優×片山杜秀
出版社・小学館文庫
評価・6点

対談本。平成30年の間に起こった様々な出来事について2人が語り合う。話題は政治・文化・科学・外交・宗教・天皇etc.と多岐にわたり、2人の博覧強記ぶりが発揮される。広く浅くという感じだが、平成30年をポイントポイントで振り返れる良書で、あっという間の500ページである。



書名・実行力
作者・橋下徹
出版社・PHP新書
評価・6点

大阪クロス選挙の維新勝利後というグッドタイミングで出版と相成った本書。期せずして宣伝となったと橋下さんはほくそ笑んでいるだろう。橋下流仕事術という感じの本書だが、(いつも通り)市長・知事時代の事例をもとに書かれているので説得力はある。だが、このパターンを踏襲し続けるとノムさん(野村克也氏)みたいに金太郎飴みたいな本がいっぱいできるだけになってしまう。果たして橋下氏は同じ轍を踏まずに済むだろうか。



書名・楊家将
作者・北方謙三
出版社・PHP文庫
評価・8点

再読。中国宋の時代、北の国境を守る武門の名家・楊家。その頭領・楊業は前面の強敵と不甲斐ない味方の両挟みになりながら戦場を駆ける。中国史に名を轟かす名将・楊業とその息子たち、中華をうかがう北の遼国の白き狼・耶律休哥との激闘。登場する男たちが、まさに漢(おとこ)ばかりである。漢たちの滅びの叫びが戦場に谺する、そんな名作である。欠点はみんな漢すぎて時にキャラの見分けがつきにくくなる点。



書名・性と欲望の中国  
作者・安田峰俊
出版社・文春新書
評価・5点

現代中国モノルポの大家となりつつある安田氏の新作(今までの諸作とは少し趣きが違う)。現代中国の性産業に焦点をあてた内容で、一時性の都とも呼ばれた東莞の成り立ちから滅びまで、広東省にあった売春島の秘密、中国ラブドール事情、爆買い日本売春ツアー、不倫SNS流出激増、日本人AV女優人気の理由、中国同性愛事情などかなりマニアック。



書名・彼女たちの売春(ワリキリ)
作者・荻上チキ
出版社・新潮文庫
評価・5点

出会い喫茶や出会い系サイトで行われる個人売春=ワリキリの実態を追うルポルタージュ。5年以上にわたって不特定多数のワリキリを行う女性たちにインタビューを行っており、荻上氏の本分野に関する情念はなかなかのものだ。「読んだからどう」という本でもないのだが、本分野に関心を持つ人であれば読んで損はないであろう。



書名・道誉なり 上下
作者・北方謙三
出版社・中公文庫
評価・9点

再読。南北朝争う混迷の時代。足利方につく近江のばさら大名佐々木道誉の生き様を描く傑作。物語は建武の新政のはじまりあたりから開始し、足利尊氏の死亡あたりで終わる。敵味方が複雑に入れ替わり、天皇家も分裂、兄弟・親子が敵対し、大名たちが離散集合する複雑な時代を佐々木道誉の視点を通して分かりやすくぶった斬る。歴史上では足利兄弟、高師直、楠木正成、北畠顕家、新田義貞、護良親王などこの時代を彩った英雄たちに比べ影の薄い佐々木道誉だが、道誉の男の生き様と北方流ハードボイルドの相性が良かったのか北方歴史小説の中でも特に異様な光彩を帯びているように感じる。また、足利尊氏という複雑怪奇なわかりにくい人間をここまで見事に活写した小説はないのではないか。恐ろしいほど戦に強いかと思えばあっさり敗れてみせ、いきなり鬱になって塞ぎの虫におかされたかと思えば、一旦ギアが入れば心腹の部下であろうが弟であろうが息子であろうが容赦なく葬る、そんな尊氏と稀代のばさらである道誉の掛け合いはこの作品の中心である。「武王の門」と並ぶ北方南北朝シリーズの名作。



書名・世界の辺境とハードボイルド室町時代
作者・高野秀行×清水克行
出版社・集英社文庫
評価・5点

対談本。タイトルからして意味不明だが、内容もまとまりがなく高野氏(お馴染み辺境作家)と清水氏(歴史学者)が、日本中世と現代ソマリアの類似点からはじまり、果ては高野氏と清水氏の人生遍歴まで興味の趣くままに語り合う。博学な二人だけあって、至る所に(いらん)豆知識が点在としており、お腹いっぱいになる。



書名・風の歌を聴け
作者・村上春樹
出版社・講談社文庫
評価・5点

再読。村上春樹は10代の時にいくらか読んでみたのだがあまりピンとこなかったので再挑戦。とりあえずは青春3部作か!と思ってデビュー作を手にとる。東京から海辺の街(神戸かな)に帰省した僕と友人の鼠(何たるネーミングセンス)の一夏の物語。ジェイズ・バー、指が4本しかない女の子など魅力的なワードが続出するが、特に特別なことは起こらない、酒を飲み、ジャズを聞き、セックスをするモラトリアムな日々。小説なんだけど何かのエッセイを読んでいるような気分にもなる。読みやすいのだが世評ほどの感動はなかったかな。



書名・1973年のピンボール
作者・村上春樹
出版社・講談社文庫
評価・4点

再読。青春3部作の2作目。僕は友人と東京で小さな翻訳事務所を営み、謎めいた双子の姉妹と同棲し、ピンボールにはまっている。風の歌を聴けに比べれば寓話的な印象が増し、何が言いたいのか今いちピンとこなかった。なお、鼠は海辺の街から旅立つ。



書名・羊をめぐる冒険 上下
作者・村上春樹
出版社・講談社文庫
評価・7点

再読。青春3部作の3作目。妻に出て行かれた僕は、耳専門のモデルをしている女性(ついでにコールガールでもある)と付き合い出す。北海道にいるらしい鼠からの手紙が原因で馬鹿馬鹿しくも壮大な羊をめぐる冒険に巻き込まれてしまう。いるかホテル、羊博士、羊ぬけ、羊男など頭がクラクラしそうなワードが頻出し、最終盤の僕と鼠の対話が哀しくも美しい。不思議な不思議な大人のための寓話という感じ。



書名・ダンス・ダンス・ダンス 上下
作者・村上春樹
出版社・講談社文庫
評価・7点

再読。羊をめぐる冒険の続編的作品。羊をめぐる冒険で様々なものを失い、それから4年が経過する。札幌のドルフィンホテルから僕のあらたな冒険がはじまる。「踊るんだよ。音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。きちんとステップを踏んで踊り続けるんだよ」僕は複雑なステップを踏んで踊り続ける、札幌・東京・ホノルル・・・。現実と幻想が交錯し、相変わらず何が言いたいのか分からない部分もあるが、魅力的な物語で、タイトルも秀逸である。



書名・ノルウェイの森 上下
作者・村上春樹
出版社・講談社文庫
評価・6点

再読。村上春樹を超ベストセラー作家に押し上げた作品。村上作品の中で特別に際立っているとも思わないが、恋愛とセックス、青年のモラトリアムなどとっつきやすい内容が多く、また羊男など幻想的なキャラが出てこず物語は終始現実世界で進んでいく。そのあたりが村上ファン以外の一般読者にも受け入れられたのであろうか。ただの「手コキ」をここまで美しく描く作品は珍しい(笑)