ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2019年7月に読んだ本(2019年8月7日更新)

でぶぶの読んだ本考察|2019年7月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・罪の声
作者・塩田武士
出版社・講談社文庫
評価・6点

賞もとってかなり話題になった作品。簡単に言えば昭和の未解決事件・森永グリコ事件の真相を小説の形で解決する社会派エンタテイメント(ミステリー)。もちろん森永グリコという企業名は出てこず(ギン萬事件になっている)登場人物は仮名だが、元新聞記者の著者が書いただけあってかなりリアリティはあるし、このような真相もあったのかもしれないなという思いにさせる。ただし、高い前評判からかなり期待していたのだが「夢中になって読んだ」「ページをめるく手が止まらない」というほどではなかった、これは森永グリコ事件をリアルタイムで見た世代でないからであろうか。



書名・ルポ「断絶」の日韓 なぜここまでわかり合えないのか
作者・牧野愛博
出版社・朝日新書
評価・6点

最近のもめまくっている日韓関係(6月出版なのでG20のちょっと前までの日韓関係)とそれに至る日韓の略史(主に第二次世界大戦以降)という感じの本。最近の日韓関係はともかく日韓の関係史に関してはあまり詳しくなかったので、あまり右にも左にも寄っていない本を読みたいと思い本書を購入(どちらかと言えば右寄りかもしれないが・・・)。韓国に関する本は近年とかく煽情的なタイトルが目立ちとても読もうとは思えないが、本書は比較的冷静な筆致で何となく現在に至る日韓の負の歴史のイメージがつかめた。確かに近年の韓国の様々な言動は看過できぬものがあるし、腹立たしく感じてしまうが、その遠因はかつての大日本帝国にあるということは前提として対応すべきであろう(なお、慰安婦問題や徴用工問題で妥協しろ、というわけではない。私は、ここ数年の日韓の懸案問題の大部分は韓国に問題があると思っている)。反省するべきところは反省する、ただし言うべきことはしっかり言う、そのような対応でよいと思う。



書名・移民棄民遺民
作者・安田峰俊
出版社・角川文庫
評価・8点

再読(境界の民の増補版)。「日本に住むベトナム難民の2世たち」「ウイグル問題と在日ウイグル人」「日本で育った中国の若者(中国籍もいれば、日本籍もいる)が上海で暮らして感じること」「国民党幹部の息子が流れに流れ歌舞伎町から最後は上海の風俗店の店主になるまで、その数奇な半生」「ヒマワリ学連(台湾の学生たち)の立法院占拠と日本人は何故台湾に酔うのか」など盛りだくさんの1冊。結論ありき定形の取材でなく一歩踏み込んでいく安田氏の姿勢は素晴らしい。願わくば日本出版界の毒に冒されることなく良質なルポを出版し続けてほしい。



書名・会津執権の栄誉  
作者・佐藤巖太郎
出版社・文春文庫
評価・7点

富田隆実、猪苗代盛国、金上盛備、蘆名義広・・・聞き慣れない名前が並ぶ。黒川城(福島県の会津若松付近)を本拠とする奥羽の名門大名・蘆名氏の存亡を描く作品である。伊達の蚕食に苦しみ、衰亡し続ける蘆名氏は小説の題材としてはおいしくないので、伊達政宗のやられ役以外ではこれまでほとんど書かれてこなかったと思う(しかも半ば内部分裂に近い滅び方なので、滅びの美学的な美しさもない)。そんな難しい題材をデビュー作でここまで料理しきった佐藤氏の腕前は尋常ではない。直木賞候補はやりすぎだと思うが、次回作も読んでみたいと思わせる。ちなみに蘆名氏は摺上原の会戦(本作でも描かれる)で伊達政宗に無様な敗北を喫し滅亡する(伊達政宗の生涯の勲章的な戦闘である。謀略の多いおっさんやから会戦は少ない)。



書名・戦国十二刻 終わりのとき 
作者・木下昌輝
出版社・光文社文庫
評価・6点

武将たちの死の直前12時間を描く、という企画モノAVみたいなキワモノかと思ったが、木下さんの手にかかるとなかなかの短編集に仕上がっている。豊臣秀頼、伊達輝宗、今川義元、山本勘助、足利義輝、徳川家康らそれぞれの死の直前が描かれるが、ひねりがきいた作品が多く楽しめた。実は猛将だけどマザコン秀頼、父親殺したい病の政宗、幽霊に憑かれている義元、勘助に至っては・・・、剣豪将軍は意外とまとも、家康は時計のチクタクがうざかった・・・などなど書いているとメチャクチャに思えますが、そこは木下さんなのでそれぞれ秀作に仕上げています(家康以外は楽しめました)。



書名・フェイク・ボーダー難民調査官
作者・下村敦史
出版社・講談社文庫
評価・5点

難民調査官とは入国管理局で難民申請してくる外国人を難民として受け入れるかどうか審査する公務員のことである(本作はクルド人問題が中心)。地味な題材であるが、下村さんの手によってとりあえずはエンタメ作品に仕上がっている。すごく面白いわけではないが、江戸川乱歩賞を受賞した作家だけあって、文章は読みやすく、最後まで一気に読ませる。下村さんの作品では「叛徒」「生還者」あたりが多少気になるので、また読むかもしれない。