ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2020年3月に読んだ本(2020年4月1日更新)

でぶぶの読んだ本考察|2020年2月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・反骨心 ガンバ大阪の育成哲学
作者・下薗昌記
出版社・サンエイムック
評価・4点

ガンバ関連の著作も多いスポーツライターの下薗さんの本。近年のガンバを育成面から追うノンフィクション。単行本サイズの割には全体的に内容が薄かった印象。ちょっと期待外れかな。



書名・ファミリーポートレイト
作者・桜庭一樹
出版社・集英社文庫
評価・4点

小さな娘・コマコとその母・マコの逃避行から物語がはじまる。コマコの視点から時には幻想的なおとぎ話のような物語、時にはリアルな物語が語られる。やがて一人になったコマコは自ら物語を紡ぎはじめる・・・。600ページを超えるぶっとい文庫。独特な力を持つ文章と奇怪な世界観はこの作家の力量を感じさせる、が、面白いかと言われれば「読んで疲れた」というのが正直なところ。桜庭さんの本は「私の男」に強い感銘を受け何作か読んだが、「私の男」に迫るような作品は今のところない。



書名・性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困
作者・坂爪真吾
出版社・集英社新書
評価・5点

性関係(風俗関係)の硬質なルポ(分析書)を多く出版している坂爪氏の新刊。地方都市におけるシングルマザーや子にとって風俗(主にデリヘル)がいかにしてセーフティネットとして機能しているのかが書かれる。風俗ルポとして興味本位で読むこともできるし、真面目な読み方もできるしと、坂爪さんはこの分野の書き手の中ではかなりバランスのとれた書き手ではなかろうかと思う。



書名・AXアックス
作者・伊坂幸太郎
出版社・角川文庫
評価・7点

グラスホッパー、マリアビートルに続く殺し屋シリーズ第三作目。主人公は歴戦の超一流の殺し屋「兜」だが、家庭では実は恐妻家という伊坂さんらしい設定で物語が展開する。久しぶりに伊坂さんの本を読んだけど、相変わらず「上質な大人向けのおとぎ話を書く人」という感想。そこまで現実寄りでもなく、そこまで空想寄りでもなく、程よいバランスと程よい浮遊感のストーリー。「超感動する」「歴史的傑作」などとは思わないけど、コンスタントに良作を出す作家さんである。(読んだのがかなり前なので)内容を忘れてしまったグラスホッパー、未読のマリアビートルを余裕がある時に読んでみようかと思った。



書名・家と庭
作者・畑野智美
出版社・角川文庫
評価・6点

下北沢の一軒家で母と姉妹たちと暮らす25歳のフリーター望。先祖代々の持ち家で、下北沢という便利な街で特に何か大層なことをしなくても、それなりの生活ができてしまう。平穏な物語なのだが、平穏な中に少しだけ独特な空気感を醸し出す。この作家さん「凄い小説」を書くわけではないが、安定して読みやすい気持ちの良い小説を書く人である。





書名・敵の名は、宮本武蔵
作者・木下昌輝
出版社・角川文庫
評価・6点

宮本武蔵を武蔵と相対した剣豪たちの視点で描く短編集。宍戸梅軒、吉岡一門、小次郎などお馴染みの面々が登場するものの従来と違う解釈で物語は展開する。やはりこの作家はなかなかやる。



書名・有楽斎の戦
作者・天野純希
出版社・講談社文庫
評価・6点

6編からなる長編もどきの短編集。本能寺の変を織田有楽斎と博多の豪商島井宗室の視点から、関ヶ原の戦いを有楽斎と小早川秀明の視点から、大阪の陣を有楽斎と松平忠直(結城秀康の息子)の視点から描く。有楽斎の短編3つは一応繋がっているが、その他の短編との互換性は薄く、連動性のある6編というよりは3編のバラバラの物語(島井・小早川・松平の3編)を一冊の本にまとめる接着剤として有楽斎の3編を使用したような感じである。一つの長編としてみれば「う〜ん」と思うところはあるが、バラバラの短編集として見ればそこそこ面白い。このサイコパス小早川秀秋は嫌いではないが、現実的にはこんなサイコパス野郎ではなく、単に愚鈍な人物だったのだろうと思う。



書名・死にたい夜にかぎって
作者・爪切男
出版社・扶桑社文庫
評価・6点

あまり読まないジャンルではあるのだが話題になっていたので購入。著者・爪切男氏の自伝的小説。デビュー作で自伝的小説で「売れる」というのはなかなか珍しい、著者の人生遍歴というか女遍歴が大部分なのだが、内容が全て事実なのであれば著者の人生はある意味かなり濃い。初体験の相手のプロレスラー似の車椅子の女、初彼女のカルト宗教を信仰するヤリマン女、著者最愛の新宿で変態に唾を売るメンヘラ女など登場する女はいちいち魅力的である。



書名・僕のなかの壊れていない部分
作者・白石一文
出版社・文春文庫
評価・6点

29歳、一流大学を卒業後出版社勤務、年収1000万円超、驚異の記憶力の持ち主の僕。僕は3人の女性と同時進行で関係を持つが誰とも深く繋がろうとしない。理屈っぽく嫌味な僕の切実な言動が心に響くかどうか・・・。 再読(と言っても読んだのは15年以上前で内容はあまり覚えていかなかった)。白石氏の初期作品で、主人公の男がとてつもなくややこしい性格の屁理屈野郎である。絶対に友人にはしたくないような人物なのだが、なかなかに女にもてる。はっきり言ってもこの小説はその女たちとのセックスと主人公の思想哲学自問自答が大部分で、「何の小説やねん?」という感じなのだが、そこは後々直木賞を受賞する白石氏だけあって、その読ませる力は大したものであり、読んでいるうちに主人公の超絶屁理屈も「もしかしてこいつは凄いことを言っているのではないか?」と思わせる(錯覚させる)。読み終わった後には「なんか凄い小説を読んだのではないか」と感じるが、よくよく考えてみればそんこともないような気もする、という感じである。



書名・非在
作者・鳥飼否宇
出版社・角川文庫
評価・6点

写真家の猫田夏海は奄美大島の海岸で1枚のフロッピーを拾う。そこには、ある大学サークルの記録(人魚・仙人・朱雀がいる伝説の島・沙留覇島の調査記録)が、そしてその記録の最後には殺人事件を告げるSOSが・・・。猫田はフロッピーを警察に届け、大規模な捜索隊が組織されるが島には彼らの痕跡がなく・・・。彼らは一体どこにいるのか?フロッピーの内容は事実なのか?本格ミステリ。 魅力的な謎と読みやすい文章ですいすいと読書が進む。ただ、解決編のカタルシスがいまいちなのが残念。なかなかの良作ではあると思うが、傑作とは言えない。そんな感じである。



書名・小説の神様
作者・相沢沙呼
出版社・講談社タイガ
評価・3点

中学生で作家デビューし将来を嘱望されたものの、スランプ気味で売れない高校生作家になってしまった僕が、美人女子高生作家の小余綾詩凪と小説の合作をすることに・・・ 上記のようなラノベ的ストーリーである(てかラノベ)。作者の相沢さんのメディウムが今年度の「このミステリーがすごい」で1位をとっていたので気になり、すでに文庫化されている本作を購入してみた。感想だが、正直期待外れである。作者の筆力というより主人公の僕(高校生作家)のうじうじ具合(陰にこもりすぎ)についていけない。ほとんどうじうじしているので読んでいて疲れてくる。ただ、それでも最後まで読ませる相沢さんの文章力はなかなかのもので、もう少し自分に合うストーリーの作品を読んでみたいとは思う。



書名・戦車将軍 グデーリアン 電撃戦を演出した男
作者・大木毅
出版社・角川新書
評価・7点

独ソ戦でブレイク中の大木さんの新作評伝。砂漠の狐ロンメルに続く第二次世界大戦のドイツ軍の将軍シリーズである。ドイツ装甲部隊の生みの親とも言われるグデーリアン、ロンメル同様虚実が入り交じる人物像を近年の歴史学の通説から読み解いていく。そこには(ロンメル同様)戦術・作戦レベルでは優秀だが戦略レベルでは瑕疵が見え隠れる姿が・・・新書なのでコンパクトにまとまっており読みやすい。後書きで「次はマンシュタイン」みたいな記述があったので次作にも期待である。



書名・独ソ戦
作者・大木毅
出版社・岩波新書
評価・7点

何故か19年にメチャクチャ売れた新書である(一般向けにしてはマニアックな素材なので何故そこまで売れたのか謎。応仁の乱とか最近売れる本はよく分からない)。この本は史上最大の地上戦と言われる第二次世界大戦の東部戦線(ドイツとソ連の戦い)を分かりやすく解説し、又は一般的に流布している誤解(ドイツ国防軍の無謬とヒトラーの戦略眼の欠如)をとくような内容になっている。200ページ強の新書なので、膨大な個々の戦闘を詳細に解説することはあたわないが、要点はしっかり押さえており、独ソの戦いを俯瞰するための書として、又は入門書として優れた出来であると思う。



書名・ドイツ軍事史 その虚像と実像
作者・大木毅
出版社・作品社
評価・7点

タイトルからするとドイツ軍に関する通史っぽいが、そうではなくドイツ軍について大木さんが書いた様々な媒体での戦史・小論・小咄などを一冊にまとめた感じの本、よって内容に統一感はあまりない。まとまりはないものの様々な記事を読めるため、小難しい内容が多い割に一気に読み終えた。



書名・ナポレオンの軍隊
作者・木元寛明
出版社・光人社NF文庫
評価・7点

ナポレオンの軍隊・グランドアルメ(大陸軍)に関する簡潔な解説書。ナポレオン軍を散兵・野砲の運用・騎兵(重騎兵・竜騎兵・軽騎兵)・兵站・ナポレオン司令部など重要な観点から解明していく。読みやすい長さと内容である。漫画・小説などでナポレオンに興味を持ち、その戦術戦略を一歩踏み込んで知りたい、という人におすすめ。