ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2020年4月に読んだ本(2020年5月4日更新)

でぶぶの読んだ本考察|2020年4月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・教団X
作者・中村文則
出版社・集英社文庫
評価・5点

奇妙な老人を中心とする緩い雰囲気の宗教団体、彼らと敵対する謎のセックスカルト教団、やがてセックスカルト教団が暴走をはじめ国家を根幹からゆさぶりはじめる・・・ 芥川賞作家中村文則氏のエンタメ大作、テレビなどでも話題になった。文庫で600ページ近い分量で作者が相当の力を注入したのは分かるのだが、色々と詰め込みすぎで渾然としている印象。それでも最後まで読ませる作者の力量はさすがで(教祖の奇妙な話は、ほぼほぼ読み飛ばしてしまったが・・・)、作者が芥川賞出身の純文学作家ではなくエンタメ作家に転身したのだな、と思わせる。まあ賛否は別れる作品だろうな、とも思う。



書名・ビコーズ
作者・佐藤正午
出版社・光文社文庫
評価・6点

九州の地方都市在住の新人作家のぼく(29歳)は、10代のころの相棒・寺井と再開。寺井との再開を機に十年前の忘れ得ぬ女・映子の姿が脳裏を離れなくなる。思いがけず始まった人捜しが、止まっていた時間を揺り動かす。 再読。と言っても読んだのは20歳前後の時で内容はほとんど忘れていた。直木賞受賞を機に新装版が出ていたので、佐藤氏の初期傑作を呼ばれる本作を久しぶりに読んでみようと思った。登場人物たちの独特の台詞が心にしみ、読みやすそうに感じるけど実は読みにくかったりする佐藤作品の中では読みやすいほうかと思う。「一つの決心のためには一つの何かを捨てることになるのだ、たぶん。なにもかも拾って身につけていくような、おれたちはもう子どもではない」「ひとりだけいればいいのね。信頼できる人間が、どこかで見守ってくれていると信じられる人間がひとりいれば幸せなんだわ。あのときのことを思い出すとなんとなくそう思うの」あとこんな叔母さんがいたらよいと思う。



書名・流浪の月
作者・凪良ゆう
出版社・東京創元社
評価・7点

本屋大賞受賞作。主人公の少女は幼い日(小学生)にロリコン大学生の青年に誘拐?される。その誘拐は少女の人生に多大な影響を与え、大人になった少女は誘拐青年と偶然再会するが・・・。 知らない作家だが、本屋大賞に敬意を表して購入。さすがに本屋大賞をとっただけあって一気読みさせる文章である。ただ、このストーリーをこれだけ美しく書いてしまうのは良いのか悪いのか・・・。この作家の他の作品も気になる。



書名・漂流
作者・角幡唯介
出版社・新潮文庫
評価・6点

1994年、沖縄のマグロ漁師・本村実は37日間海上を漂流した後、奇跡の生還を遂げる。だが、8年後本村は再び漁に出太平洋に消えた。なぜ、本村は再び漁に出たのか、独自の冒険理論を持つ冒険家の著者は本村ら南海の漁師たちの生き方に強く惹かれ取材は深みにはまっていく・・・。文庫で650ページの長編ルポ。 いつもの角幡さんの本とは毛色が違う。いつもは自身の冒険(体験)を物語にしているが、今回はほぼほぼ他人の物語である。漂流そのものよりその背景(沖縄佐良浜の歴史、沖縄漁師たちの歴史、マグロ漁の歴史など)に関する記述のほうが多く、いささか冗長にも感じる。ただ、あとがきで角幡さんが「この本で書きたかったのは一言で、海、である」と述べるように、雄大で理不尽で多くの命を呑み込む深淵を描くにはこの程度の分量は必要だったのかもしれない。かなり本格的かつ硬質なルポのため、読み手は選ぶし、読むのに時間もかかる。ただ、読み終えた時「読んで損はなかった」と思える本である。しかし、文庫分のくせに1100円という値段はどうにかならんのか?最近値上がりしすぎでないか?



書名・海峡に立つ 泥と血の我が半生
作者・許永中
出版社・小学館
評価・5点

大阪中津の在日出身で政界・財界・裏業界の間を浮遊し最後の大物フィクサーと呼ばれ、イトマン事件・石橋産業事件などで一般にも名を知られ、逮捕・逃走、そして現在は韓国で暮らす禿頭の男の自伝。 自伝ゆえに己は美化され、事実関係について明らかにおかしい部分や、あえて核心に触れていない部分なども目につくが、当時の空気を感じることはできる。他のルポなどと併読すれば奥行きが出てくるであろう。





書名・クルスク大戦車戦 史上最大の機甲戦の実像
作者・青木基行
出版社・歴史群像新書
評価・5点

第二次世界大戦の東部戦線で起こった史上最大の戦車戦と呼ばれるクルスクの戦い(ドイツ側から見れば城塞作戦の一部)を描く戦記本。 300ページのうちクルスクの戦いについては5,60ページ程度でそれ以外はクルスクに至るまでの戦況分析、独ソ両軍の将軍や兵器の紹介が占める。そこそこ読みやすいのだが「クルスクの戦いについてがっつり読みたいぞ!」という方には別の本のほうがよいかもしれない。



書名・小説フランス革命1 革命のライオン
作者・佐藤賢一
出版社・集英社文庫
評価・5点

タイトル通りフランス革命の大河小説。西洋史小説の大家・佐藤氏による大長編(文庫だと20冊近くか)。最近ナポレオン関連の本を何冊か読み、ナポレオン時代の直前期であるフランス革命期に興味を持ち、(長すぎるので)敬遠していた本シリーズに挑戦することにした。 1巻は破産の危機に瀕したフランスの現状変革のため国王ルイ16世は第一身分(聖職者)第二身分(貴族)第三身分(平民)から成る全国三部会の召集を決定。ドーフィネ方式か1614年方式か。平民宰相ネッケル、後に革命そのものとなるロベスピエール、そしてミラボー。1巻ではロベスピエールは脇役にすぎない。硬直した時代を動かすのは狂気をはらんだ怪物でなければなく、その役目は「ほうそうの虎・革命のライオン」である偉大なる醜男ミラボーが果たすのである。



書名・小説フランス革命2 パリの蜂起
作者・佐藤賢一
出版社・集英社文庫
評価・5点

絵画で有名な「球戯場の誓い」が起こる。平民宰相ネッケルが解任して民衆のフラストレーションがたまる。「武器をとれ」さえない弁護士だったデムーランが民衆に火をつける。ただし、主役はまだ浮き名を流しまくる巨大な醜男ミラボー。しかし、ミラボーに金魚の糞のごとく付きまとうロベスピエールの存在感が増し始める。