ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2020年7月に読んだ本(2020年8月1日更新)

でぶぶの読んだ本考察|2020年7月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・ 彼が通る不思議なコースを私も
作者・白石一文
出版社・集英社文庫
評価・6点

白石さんらしい謎なタイトル(笑)主人公の霧子が友人が死にかける現場で出会った不思議な黒ずくめの男・林太郎。後日霧子と林太郎は合コンで再会。霧子はこの不思議な男と共に歩んでいくことになる。林太郎は学習障害児の教育に力を発揮し、その異能の力は徐々に人々の知るところとなっていく・・・。 白石さんと言えば独特のくどさが売りだが(笑)、この物語は比較的読みやすかったし、読後感も悪くない。白石初心者に良いかも。



書名・この胸に深々と突き刺さる矢を抜け
作者・白石一文
出版社・講談社文庫
評価・6点

10年以上前に読もうとした時は途中挫折。私も年を重ねたのでそろそろ読めるかなと思ったらあっさり完読できた。敏腕雑誌編集長のカワバタは癌に冒されながらスクープを追い、女を抱き、息子の死を悼み、社内抗争に巻き込まれ、政治家と語らう。「俗物カワバタの不思議な日々」とかのタイトルのほうが自然な気もするが「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」という謎なタイトルにしたことでこの小説の格が上がったような気がする。物語の至るところに様々な引用が強引に差し込まれ、唐突なカワバタの長口舌(白石さんはよくやる)によって思想が大いに語られる。なかなかカオスな小説なのだが山本周五郎賞を受賞したということは多分名作なのだろう、と思う。



書名・神秘
作者・白石一文
出版社・講談社文庫
評価・6点

タイトル通り不思議な能力を持つ人間に関するお話。末期癌に冒された主人公の菊池が不思議な能力を持つ女性を探しはじめる、という感じで物語がはじまり東京・神戸を舞台に展開していく。相変わらず哲学的な思考が至るところに出てくるが、ミステリー小説ではないのに物語が終わりに近づくにつれパズルが完成するように人物が繋がっていく(その趣向が良い悪いは別にして)。ラストのおちはある登場人物の不思議な能力に関してだが、少し笑えた(そういう解釈があるのか!(笑) という感じ)。



書名・砂上
作者・桜木紫乃
出版社・角川文庫
評価・6点

北海道・江別で暮らす柊令央、バツイチ、同居していた母親が死にパートの給料と別れた夫からの月5万円の慰謝料で暮らすどことなく暗い40女。そんな令央の雑誌に投稿した文章が編集者の目にとまり、令央は小説を書くことになる。ただし、編集者からのダメだしに次ぐダメだしで小説はなかなか完成しない。ただ、執筆にのめりこむ内に令央の内部にも変化が生じ、平凡で陰鬱だが安定していた令央の世界に亀裂が生じていく。 安定の桜木さん。コレは自伝的小説なのか?桜木さんの描く北海道には明るさがあまりない。そこはかとなく暗い冬の陰鬱な北海道が物語にマッチする。





書名・公安調査庁 情報コミュニティーの新たな地殻変動  
作者・手嶋龍一佐藤優
出版社・中公新書ラクレ
評価・5点

毎年出る恒例の対談本で安定した興味深さ。いつもは国際情勢が俎上に上がるのだが、今回はあまり目立たぬ諜報組織である公安調査庁がメインテーマである。本によれば日本には主に5つの情報機関(内閣情報調査室・公安調査庁・外務省の組織・警察庁の公安組織・防衛省の情報部門)があり、公安調査庁はそれらの中でも独自の役割をになってきたという。二人とも胡散臭いのでどこまでホンマか分からないが、興味深い内容である。



書名・帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる 
作者・戸高一成大木毅
出版社・角川新書
評価・7点

歴史を次代に残していく、史料や証言にどう向き合うかなど古代中国で言えば史家のような立場にあった二人が語り合う対談本。表紙を見た時は「海軍関連の本の戸高さんと第二次世界大戦のドイツ軍関連の本の大木さんって何の組み合わせなんや?しかも本の内容は大日本帝国陸海軍ぽいし大木さん関係ないじゃん」と思ったが、大木さんが以前は戸高さんと近いフィールドにおり顔見知りだったと知り納得。ちなみに対談そのものは興味深く読んで損はない。



書名・祈り  
作者・伊岡瞬
出版社・文春文庫
評価・3点

「代償」「悪寒」などがベストセラーとなり、エンタメ作家として名を売っている伊岡さんの小説を初読了。結論から言うと期待外れであった。ダメダメサラリーマンの楓太と謎の超能力中年男、どちらも社会的に言えばあまり冴えない人生を送っているそんな二人の邂逅によって物語が動きはじめる・・・と言った感じなのだが、全体的にちゃちいのである。タイトル・表紙・500ページ弱という分量からもっと壮大な物語を期待していたのだが、一部人物の造詣や謎(動機!?)などがしょぼいし、尚彦の執拗なまでの動きも何となく釈然としない。50万部売れたと言われる「代償」を読むまで評価は保留である。



書名・レッドサンブラッククロス
作者・佐藤大輔
出版社・徳間文庫など
評価・8点

再読。レッドサンブラッククロスの本編(徳間文庫7冊、死線の太平洋2冊、パナマ侵攻2冊)をじっくりと読んだ。いわゆる一世を風靡した歴史シミュレーション小説というやつなのだが(全盛期は90年代か)本作はやはりその中でも格が違うな、と改めて思う。この作品だけ、というより佐藤大輔の技量の凄まじさなのだが、戦闘、戦術、戦略、政略、経済、人物批評などのバランスがよく(戦闘、戦術中心の歴史シミュレーション小説が多い)また一種独特の佐藤節と言われる文章がクセになる。一般的な歴史小説を書いていればかなりの地位を築いたとも思われ、出版業界の中でも評価されにくい分野(歴史シミュレーション小説)に生息したのが惜しまれる。さて本作はパナマ侵攻2巻(パナマ侵攻作戦直前で終了!畜生め!)で尻切れトンボで終わるのだが(佐藤大輔においては、未完は風物詩である)誠に惜しいことである。