ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2021年1月・2月に読んだ本(2021年2月27日更新)



でぶぶの読んだ本考察|2021年1月・2月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・ 月光ゲーム Yの悲劇
作者・有栖川有栖
出版社・創元推理文庫
評価・6点

本格ミステリ界の大家(と言ってもよいと思う)の一人有栖川さんの(多分)デビュー作。複数の大学生サークルが集まる閉ざされた空間(火山の噴火によって下山できなくなった山中のキャンプ場)で連続殺人事件が発生する。度々起こる火山の噴火もあってパニックもの的な要素も。古い作品であるし、青臭い部分も散見されるが本格ミステリファンとしてはおさえておくべき作品かと思う。ちなみに「学生アリスシリーズの1作目」である。



書名・孤島パズル
作者・有栖川有栖
出版社・創元推理文庫
評価・6点

学生アリスシリーズ2作目。アリス(男・ワトソン役)、江上部長(男・大学の推理小説研究会の部長、アリスもその部員)、ヒロイン・マリア(女・同じく推理研)が絶海の孤島で夏休みを過ごすことに、そこにはマリアの親族ら13名の男女が集まり、お約束通り連続殺人事件が起きる。絶海の孤島をクローズド・サークル化、宝探し、近づく台風、連続殺人とベタもベタなのだが一気に読ます力はなかなかのもの(さすが本格ミステリ界の大御所である)。ロジック好きにはこの作家さんは合うのだろうなと思う。



書名・双頭の悪魔
作者・有栖川有栖
出版社・創元推理文庫
評価・6点

学生アリスシリーズ3作目。四国の山奥の芸術家たちの村に迷い込んだマリアが帰ってこない。江神部長、アリスら英都大学推理研究会の面々は村への侵入を試みるが・・・。 交通が途絶した2カ所で起きる殺人事件、探偵役(江神さん)とワトソン役(アリス)の分断、3度も挟まれる読者への挑戦状などミステリファンが喜びそうな小道具が満載、芸術家の村の芸術家も癖が強そうな面々で700ページ近い分量だが一気に読ませる。論理好きな方におすすめの正統派の本格ミステリ(有栖川さんの作品は、けれんみは少なく島田荘司の御手洗潔のような特異な名探偵好きな方にはあわないだろうと思う)。3作連続で読んだので有栖川さんの作品は一旦休みかな。



書名・宇喜多の楽土
作者・木下昌輝
出版社・文春文庫
評価・3点

宇喜多直家が主人公の「宇喜多の捨て嫁」が傑作だった上に、私の好きな宇喜多秀家が主人公ということで否が応でも期待値は高まったが、結論から言うと「がっかり」であった。まぁ、もともと宇喜多秀家は個性に乏しく劇的なエピソードもあまりないので小説の主人公にしにくい人物だとは思う(関ヶ原で西軍の主力だったことから豊臣びいきの人たちからの人気は極めて高いが・・・)。この小説の宇喜多秀家の言動はあまりに現実離れしているように思う。もちろん小説なので多少の嘘は問題ないと思うが、作家の嘘(考え)を「本当にこんなこともあったかもしれないな」と思わせたり、史実と混同させるような書きっぷりは必要かと思う(批判も多いが、司馬さんの小説はその点で非常に優れている。司馬さん個人の史観を史実と勘違いさせるような書きっぷりの見事さである)。個人的には、宇喜多秀家について小説を読むなら、短編ではあるが司馬さんの宇喜多秀家(「豊臣家の人々」に収録)の方が短時間で本作よりはるかに満足感を得れると思う。それにしても第一作の「宇喜多の捨て嫁」を読んだときは、「尋常ならざる作家が出現したな」と思ったものだが、その後は同水準の作品を読めていない。本作も読みやすくはあるがあまり感じるものはなかった。



書名・本当は誤解だらけの戦国合戦史
作者・海上知明
出版社・徳間書店
評価・5点

「信長・秀吉・家康は凡将だった」と刺激的な副題がつけられている。軍事的視点から見た信長・秀吉・家康を中心とした戦国読み物という感じの本。著者は武田信玄、上杉謙信を高く評価しており、信長らには辛い。個人的には信玄は孫子に通じた作戦家であり戦場の優秀な実務家、謙信は戦場の芸術家、信長・秀吉は戦術的には平凡だが戦略家であり軍政家としては極めて優秀というイメージを持っている。しかし、著者は信長らを結構ボロクソにこきおろす(笑)同意できるは別として著者の本の内容は斬新で読み物としては好きである。ただし、本書は内容にムラがあった気がする。序盤は楽しんで読んでいたのだが、秀吉、家康のパート、特に家康部分の関ヶ原・大坂の陣などは単に事実の羅列という感じであまり面白くなかった(著者が家康が好きでないゆえ力が入らなかったのか?)。個人的にはPHP新書の「戦略で読み解く日本合戦史」のほうが好きかな。それとハードカバーは高いのでこの系統の内容であれば、新書で出してほしいと思った。





書名・取扱注意
作者・佐藤正午
出版社・角川文庫
評価・4点

女にもてまくる主人公の僕と女にもてて怪しい商売をしていてロリコンで破滅型の僕の叔父が物語の中心であり、現代日本の地方都市が舞台で、魔法もファンタジーも特に出てこないのだが、とにかく浮き世離れした物語である。話は飛びまくり、登場人物の言動も微妙にズレており、物語も崩壊しかけているように感じるのだが一応収束している。それなりに読みやすいのだが、(作者が何をしたいのか)よく理解できないという佐藤正午っぽい作品。何度か読めば作家の意図に気づけるのかもしれないが、気づいても大したことないような気もするので再読はしないだろう。



書名・カップルズ
作者・佐藤正午
出版社・小学館文庫
評価・7点

小説巧者が書く地方都市の男女に関するありふれたようでありふれていない短編集。小学生から恋されるモテ中年親父、女の保証人になり夜逃げすることになった男、夫を殺された女、ありふれた男と有名女優の寓話のような過去、娼婦と間違えた女と結婚した男、男たちが群がったものの身を持ち崩し早世したホステスなどなど。読みやすく佳作揃いである。



書名・事の次第
作者・佐藤正午
出版社・小学館文庫
評価・5点

上記カップルズと同じく地方都市(多分佐世保か長崎か)を舞台にした短編集(ちょっとずつリンクしてるやつ)。短編の質的にはカップルズとさほど変わらないのだが、点数に2点の差がついたのは読破時の(私の)テンションなどによって評価が揺れたのである。ありふれた日常にちょっとしたスパイスをかけるような物語群なので読む時の気分によって感想が大きく揺れるようなタイプの小説なのだ(次読んだ時は7点かもしれない)。



書名・鯖
作者・赤松利市
出版社・徳間文庫
評価・5点

日本海の孤島を根城にする一本釣り漁師集団。かつては有名を轟かせた彼らも時代の波にはあがらえず、日銭を稼ぎ場末の居酒屋で管を巻くどうしようもな輩に成り下がっていた。そこに思わぬもうけ話が舞い込むのだが・・・。 下品で小便臭く汗臭い物語である、爽快感など一切ない。欲望や狂気に駆られた男たち・女たちが暴走していく。お友だちにはあまりすすめたくない一冊だ!



書名・法月綸太郎の功績
作者・法月綸太郎
出版社・講談社文庫
評価・6点

探偵と作家が同じ名前の名探偵・法月綸太郎の短編集。「イコールYの悲劇」犯人は何となく分かったがダイイングメッセージは全然分からなかった。「中国蝸牛の謎」う〜ん、これはイマイチではなかろうか・・・「都市伝説パズル」シンプルで明快な謎解き。良作。「ABCD包囲網」犯人の行動の意図がよく理解できない。そこまでやる必要は全くないと思うのだが・・・「縊心伝心」う〜ん、犯人の行動がいまいち納得できないなぁ・・・



書名・現代中国の秘密結社
作者・安田峰俊
出版社・中公新書ラク
評価・5点

中国ものルポライター安田さんの新作。大きく6つの章に分かれ「洪門と青バンの近現代史」「中国致公党」「世界の洪門」「法輪功」「全能神」「新天地教会と新宗教たち」などとなる。タイトルから分かる通り雑学的知識が多数記載されるものの、いつもの安田さんの体当たりルポ的なものを期待すると肩すかしを食らうかも(日本の法輪功の教室に通ったりはしているが)。



書名・学生街の殺人
作者・東野圭吾
出版社・講談社文庫
評価・7点

再読。東野圭吾の初期作品(90年前後か)。東野圭吾で一番好きな作品と言われれば私の中ではこれだった。「白夜行」「幻夜」「秘密」「容疑者Xの献身」「聖女の救済」「宿命」「同級生」「むかし僕の死んだ家」「パラレルワールドラブストーリー」「変身」「トキオ」「仮面山荘殺人事件」など好きな作品・優れた作品は多いが、一番好きなのはこれだった。古びた旧学生街で起きる連続した殺人事件、密室殺人的なものもあるのだが本質的には最近の東野圭吾からは想像し難い青春小説だ。言葉のチョイスも東野圭吾っぽくない。ただ、(多分)10代のこれを読んだ時にはこの物語がまとう空気にひどく惹かれたのだ。ただ、今回再読してみると私も年をとったのかかつてほどの吸引力を物語に感じなかった。恐らく、この物語は青春という時代を過ごしている若者の心に強く訴えるが、青春が過ぎ去りおっさんになったかつての若者にとっては過去の遺物か、又は眩しすぎるのだろう。よってかつての感覚で言えば9点くらいだったが今回は7点をつけた。「どういう山があり、どういう川があり、そこにどういう水が流れているのかもわからなかった。それだけに、その水を飲み、その水で顔を洗うことにも、身震いするような意義があるような気がした」本当に青臭い(笑)東野圭吾も今はもうこんな物語を書けないと思う(笑)でも若い人(特に若い男性に)に「東野圭吾でおすすめは?」と聞かれたら今でもこの作品をすすめるだろうと思う。



書名・世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
作者・村上春樹
出版社・講談社文庫
評価・6点

再読。講談社文庫の村上春樹を久しぶりに読み返そう!に続き新潮文庫の村上春樹を久しぶりに読み返そう!を開始。とりあえず長編を順番に読んでいくつもりだが、いきなり「村上春樹の不思議の世界」の本作である(笑)謎の科学者、太った少女、計算士、記号士、やみくろなどが跋扈する現在社会に翻弄される「私」と高い壁と山に囲まれ、一角獣の頭骨から夢を読んで暮らす夢読みの「僕」。2つの不思議な世界のパートが交互に語られる。「僕」の世界は静謐で寓話的であるが、「私」の現在世界もかなり現実味がない(笑)多分比喩と暗喩に満ちた壮大な寓話なのであろうが、意味深な表現も多く全てを理解するのは恐らく不可能。村上春樹の読みやすい文章ゆえ、最後までなんなく読めるが、私は講談社文庫の物語たちのほうが好きかな・・・。本作を村上春樹の最高傑作と見る人も多いと聞くがそれはやはり玄人ゆえの評価であって、素人にとっては(読みやすいことは読みやすいが)なかなかにハードルの高い作品であろう。さて、次は問題作「ねじまき鳥クロニクル」。連続して読むと疲れそうなので、ちょっと間をあけるとしよう。