ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2021年3月・4月に読んだ本(2021年4月27日更新)



でぶぶの読んだ本考察|2021年3月・4月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・ ふたりぐらし
作者・桜木紫乃
出版社・新潮文庫
評価・6点

舞台は相変わらず北海道(笑)元映写技師で今はプー状態の夫と看護師の妻の物語。それぞれの視点の短編が交互に出てくる。夫のボケかけの母とのやりとり、妻の母との確執、まともに働かない夫など重そうな内容なのだが不思議にそこまで暗さがない(桜木さんぽくないやんけ笑)。多少物足りないでもないが、読みやすい。



書名・火車
作者・宮部みゆき
出版社・新潮文庫
評価・9点

再読。休職中の刑事・本間は親戚の青年に頼まれ、その青年の婚約者・関根彰子の行方を探すことになる。しかし、自ら失踪した彰子はおのれの足取りを徹底的に消していた・・・。探索が深まるにつれ次々と思いもよらぬ事実が本間の前にあらわれる。 宮部作品を全て読んでいるわけではないが(特に近年のはほとんど読んでいない)、やはりこの火車が宮部作品の中では随一かと思う。色々と瑕疵もあるが(個人情報の扱いがゆるすぎる。舞台が90年前後というのもあるのだろうが・・・)、読ませる文章、物語の根幹となる魅力的な謎、適度な分量など申し分ない。直木賞受賞後も模倣犯、ソロモンの偽証、杉村シリーズなど大作を世に問うているが(杉村シリーズは大作とは言わないかもだが)、読ませる力こそ健在なれど物語が無駄に長くなっているきらいがある。やはり宮部さんの全盛期はこの火車前後(宮部さんの経歴で言えば初期)ではなかろうか。「龍は眠る」「魔術はささやく」「クロスファイア」「蒲生邸事件」などは十代の私に鮮烈な印象を残した。この頃のようなキレを取り戻してもらいたいとも思うが果たしてどうだろうか。



書名・ロシア紅茶の謎
作者・有栖川有栖
出版社・講談社文庫
評価・5点

有栖川国名シリーズ第一弾の短編集。犯罪臨床学者(なんじゃそれ?)火村英生とミステリ作家・有栖川有栖のコンビが活躍するシリーズである。 「動物園の暗号」微妙。爽快さはない。「屋根裏の散歩者」推理するのはほぼ不可能だが、記号の意味・着眼点は面白い(笑)。「赤い稲妻」荒さはあるが魅力的な謎と解決が鮮やか。「ルーンの導き」動物園の暗号と同じく微妙。「ロシア紅茶の謎」現実感に乏しい気もするが意外で大胆なトリック。情景を思い浮かべると笑えるが少し哀しい。「八角形の罠」並。



書名・悪意
作者・東野圭吾
出版社・講談社文庫
評価・8点

再読。殺人事件の犯人・野々口の手記と(いささか影の薄いシリーズ探偵の)加賀刑事の独白が交互に書かれる異色のミステリー。15年前くらいに読んだ時も「凄い作品だ」と思ったけど、改めて読んでみて「やはり凄い作品だ」という感想である。90年代の東野さんは今ほどメジャーじゃなかったけど、多彩は変化球を投げる投手みたいに、色々なタイプの作品を発表していた。個人的には講談社文庫のトキオ以前くらいの作品が好きかな。直木賞以後のエンタメ系作品も悪くはないけど、もうミステリー系は書かないのかね。



書名・魔力の胎動
作者・東野圭吾
出版社・角川文庫
評価・4点

「ラプラスの魔女」のスピンオフ的な作品か。短編集の形で、さすがの東野圭吾であっという間に読めるのだがさすがに力を抜きすぎではないか。もはや大御所で出せば何でも売れるという状態なのだろうけど、個人的にはこんなに量産しなくてよいから力の入った硬派な長編を読みたいところである。





書名・ねじまき鳥クロニクル3冊
作者・村上春樹
出版社・新潮文庫
評価・6点

再読。村上春樹の問題作で泥棒かささぎ編、予言する鳥編、鳥刺し男編の3冊からなる(タイトルも謎)。20歳前後に読んだ時の感想は「意味わからん」であったが、おっさんになった今ならば新たな感想が出てくるのではないかと思い再び手にとってみたが・・・感想は「相変わらず意味わからん」であった。意味わからんなりに2巻までは一応ストーリーらしきものが展開されるのだが、3巻は混沌カオス状態である。聖書の意味不明な予言書みたいな感じである。村上春樹の頭の中では、果たしてこの物語の整合性はとれているのであろうか?ただし、このわけの分からん大長編を最後まで読ましてしまうのはさすがは村上春樹の文章力・表現力・展開力と言うべきか。そして主人公のオカダトオルとその妻クミコはともかく脇を固めるキャラクターの多彩さと個性はなかなか見事である(ついでにネーミングセンスも)、彼らが物語を最後までもたせた、と言えるかもしれない。綿谷ノボル、加納クレタ、加納マルタ、笠原メイ、ナツメグ、シナモン、牛河、皮剥ぎポリス・・・。そして鮮烈な印象を残す皮剥ぎ(間宮中尉が目撃)。一種の奇書と言えるかもしれない。



書名・海辺のカフカ 上下
作者・村上春樹
出版社・新潮文庫
評価・7点

ハードボイルドワンダーランド、ねじまき鳥の次に読んだので非常に読みやすい。一人称で語られる15歳の田村カフカ少年の章と三人称で語られる中野区から外に出ないナカタ老人の章が交互にやってくる構成である。読みやすい文章と魅力的なキャラで一気に読ませるのだが、夢と現実の狭間が曖昧だったり、比喩隠喩が多発したり、佐伯さんの秘密もはっきり分からないし、ぬるぬるしたやつの正体もよく分からないし、森の中のは一体何だったの?という気もするし、戦時中の事故のこともよく分からないし、ジョニーのこともいまいち分からない・・・などなど理解のできなさは前作ねじまき鳥とどっこいどっこいである(笑)村上春樹の頭の中には明確な解があるのだろうか?と相変わらず思う(笑)



書名・蠅の王
作者・ウィリアムス・ゴールディング
出版社・ハヤカワ文庫
評価・5点

1950年代発表のノーベル文学賞も受賞した著者の代表作。疎開する少年たちを乗せた飛行機が南太平洋の小島に不時着、生き残ったのは少年たちだけ。少年たちは、はじめは力をあわせ島での暮らしをおくっていたが、徐々に人間の中の闇の部分が牙をむきだす・・・。 十五少年漂流記のダークバージョンという感じである。古典的名作ということで名前は知っていたが、最近ちょっとしたきっかけがあり購入してみた。後年類似のさらに過激な作品が多数出版されており(日本でいえばバトル・ロワイヤルなど)、70年前の作品ということもありインパクトは薄れているのではないかと思うが、美しい島と海の描写はさすがだし(少年たちがダークサイドにおちていくのとは対照的である)、蠅の王(ベルゼブブ)というタイトルが秀逸である。ちなみに新訳版で旧訳の新潮文庫版もある。



書名・東国武将たちの戦国史
作者・西股総生
出版社・河出文庫
評価・8点

これは面白かった。東国、主に関東の戦国時代を武将を中心に軍事的な視点から描く読み物という感じ。1400年代後半から1590年の小田原開城までの約100年を10のエピソードから読み解く。武田信玄、上杉謙信などお馴染みの人物も取り上げられるが(それらの章もなかなかに興味深い)、名前は知っているものの詳細はあまり知らない長尾景春、太田道灌、長尾為景、河越の戦い、北条氏綱などについて楽しく知れた(古河公方、山内上杉、扇谷上杉の何たるかも何となく分かった)。西股さんのこの系統の本をまた読みたいと思うが、このクオリティで増産するのは難しいだろうな、とも思う。



書名・第三帝国 ある独裁の歴史
作者・ウルリヒ・ヘルベルト
出版社・角川新書
評価・5点

ドイツ第三帝国(いわるゆるナチスドイツ)に関する概説書(入門書)的な本。新書で250ページにすぎないため非常に簡潔である。



書名・天安門三十年 中国はどうなる?
作者・安田峰俊・石平
出版社・育鵬社
評価・6点

安田さんと石平さんの対談本。6割くらいが天安門関連。残りの4割くらいが今後の中国関連(習近平体制)。中国出身だけど右寄りの言論関係者という立ち位置で出版界に存在していると思っていた石平さんの意外な側面が見れた。その落差は天安門事件によって石平さんが壊れてしまった証なのだろうか(安田さんはそんな見方をしていた)。共に中国史に通暁し、天安門事件に当事者取材者として深く関わった二人の対談だけに凡百のエセ中国本とは一線を画す。「天安門事件は実際は民主化運動ではないんです」一般常識とは違うこんな言葉が深く理解できた。もうちょい大手出版社で出版してよい内容だと思うぞ(育鵬社ゴメン!)。