ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2021年5月・6月に読んだ本(2021年7月5日更新)



でぶぶの読んだ本考察|2021年5月・6月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・ ロング・グッドバイ
作者・レイモンド・チャンドラー
出版社・ハヤカワ文庫
評価・7点

世に名高いハードボイルド作品。10年前くらいに買っていたのだがぶっといのと海外小説が苦手というのもあって読んでいなかった。最近村上春樹作品を読み返しているのもあって、「村上春樹のリスペクトするチャンドラー作品も読まないとな」ということでついに読了。一応ミステリーでもあるのだが、ミステリーとしては特に特筆すべきものはなくやはりハードボイルドとして読むべきであろう。私立探偵フィリップ・マーロウと暗い影を宿す男テリー・レノックスの邂逅から数奇な物語がはじまる。マーロウの言動は「こいつアホなのか」と思うところ多々あるが、アホでやせ我慢で気障で感傷的なのがハードボイルドなのであろう。「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」「さよならは言いたくない。さよならは、まだ心が通っていたときにすでに口にした。それは哀しく、孤独で、さきのないさよならだった」「ギムレットを飲むには少し早すぎるね」



書名・誰彼
作者・法月綸太郎
出版社・講談社文庫
評価・6点

密室から消えた教祖。マンションで発見された首なし死体。本格ミステリーである(笑)探偵・法月綸太郎(作者と同じ名前の探偵さんである)の思いつき推理が事件をますます複雑化させる問題作(笑)まあ「三つ子」という時点でトリックはある程度想像がついてくるが、この作品の見所はそこではない。結構わけの分からん(複雑)な内容なのにそこそこ読みやすいのはグッドである。



書名・そして夜は甦る
作者・原寮
出版社・ハヤカワ文庫
評価・4点

80年代後半に書かれた有名な探偵小説。西新宿のはずれに事務所を構える私立探偵の沢崎が主人公。かなり有名で存在は知っていたのだが、何となく今まで読むことがなかった。最近チャンドラー(ロンググッドバイ)を読んで、チャンドラーの影響を受けたと言われる本作を読む良い機会かと思い読んでみた。ミステリー的な要素も強いが、ハードボイルドと言ってよいかと思う。というよりチャンドラーのフィリップ・マーロウを日本版にした感じである。作者の原氏がいかにチャンドラーとマーロウが好きかをあらわしたような小説と言える。ただし、本家・チャンドラーの何とも言えない哀しさや余韻のようなものまでは感じられず、本家とどちらを読むかで迷ったらとりあえずは本家を読んだほうがよいだろう。ただし、日本語なので登場人物の名前は覚えやすくて助かる。



書名・じんかん
作者・今村翔吾
出版社・講談社
評価・4点

戦国時代の松永久秀を描く歴史小説。売り出し中の作家さんでかつ直木賞候補ということで読んでみたが期待外れであった。読みやすいのは読みやすく500ページの作品だが一気に読めた点は悪くないのだが、どうにも歴史小説の重厚さやリアリティが感じられないのだ。松永久秀の少年時代から丁寧に描かれるのだが、松永の人物像が何だか薄っぺらく感じられて仕方がないのだ。松永の追う夢がこれでよいのか?あまりに現在的すぎないか?評判の作品・作家だっただけに凄みのある松永像を期待していたが残念だった。



書名・ルポ川崎
作者・磯部涼
出版社・新潮文庫
評価・5点

タイトルは「ルポ川崎」だが、川崎市を俯瞰するようなルポではなく、川崎市の中でも特に問題あり(と言われる)な川崎市南部の川崎区がルポの中心となる。本来はタイトルも「川崎区の不良たち」などと限定されたもののほうが相応しいのだろうが、ルポ川崎というタイトルのほうが世間の耳目をひきつけやすいという判断かもしれない(私も、川崎区の不良たち、では購入しなかったと思う)。それなりに興味深い内容ではあるが、地域も登場人物もかなり偏っており「タイトル倒れ」という感じは否めない。





書名・恋を数えて
作者・佐藤正午
出版社・角川文庫
評価・6点

200ページに満たない中編小説。港のある地方都市で水商売で生計をたてる秋子の20代の7年間をつづる小説である。嘘をつき暴力をふるう同棲している男、しょうもない客、ホステス仲間、よくわからない兄などが登場するが基本的には静かな物語である。秋子のどこにでもいそうなリアリティが何ともいえない余韻をよんだ。けっこう好きかな。



書名・中国VS世界 呑まれる国、抗う国
作者・安田峰俊
出版社・PHP新書
評価・6点

お馴染み安田さんの新作。中国と良くも悪くも対峙しているけど日本人にとって、その国と中国の対峙の状況が分かりにくい10カ国を紹介。たとえば、韓国、北朝鮮、インド、ベトナム、アメリカ、台湾などの国と中国の関係はそれなりにニュース等で報じられ日本人にも分かりやすいが、この本で紹介される国(イスラエル、ナイジェリア、カザフスタン、エチオピア、セントビンセント及びグレディーン諸島、セルビア、カナダ、パキスタン、スリナム、オーストラリアなどなど)は分かりにくい国が多い。パキスタンやオーストラリアなどは何となく理解している人もそこそこいるかもしれないが、それ以外は一般人にはチンプンカンプンであろう。わかりやすく読ませる中国と世界の関係(主要国以外)関連雑学本である。コラムの「孔子学院をスパイする」はちょっと笑える(別にスパイしていない 笑)。



書名・正しい女たち
作者・千早茜
出版社・文春文庫
評価・6点

短編集。全体的に悪くない、実力のある作家さんだと思う。「温室の友情」友情なのか何なのか。後味はあれだけど悪くないか。「海辺の先生」綺麗にまとまっている話。嫌いじゃない。「偽物のセックス」男の言動がおかしすぎる。いまいち。「幸福な離婚」こういう心境に至るのだろうか。ここまで綺麗になるのだろうか。「桃のプライド」温室の友情、偽物のセックスと登場人物が同じ。現実的な世界と華々しい世界の対比。「描かれた若さ」なんか抽象的な話。ちょっと気持ち悪いぞ。



書名・宿命
作者・東野圭吾
出版社・講談社文庫
評価・8点

再読。東野圭吾の初期の名作。高校生の時に読んでこのあたりの作品群で東野圭吾にはまったのだが、再読してみて改めて名作だと感じた。小学生時代から高校時代までライバルであった主人公(警察官)と容疑者(資産家の息子にして医者)の宿命の物語なのだが、読みやすい上に、一定の重厚感や品も備えている上、最後の余韻が何とも言えない。いい映画を見た後のエンドロールで余韻を楽しむのと同種の余韻が楽しめるよい作品である。それにしてもこの頃の東野さんはやっぱり好きやな(最近の作品群は私的には並)。



書名・東京貧困女子
作者・中村淳彦
出版社・東洋経済新聞社
評価・7点

東京とその近郊に暮らす単身女性、シングルマザーらに取材したルポ。中村さんは元々風俗嬢などのルポで有名な人だが、この本は東洋経済新聞社から出ているだけあって少し毛色が違う(いつものルポより社会問題にフォーカスした感じ)。社会問題や貧困問題に関する本というのは真面目に書けば面白味がなくなり、一般受けしない内容となりあまり売れない、ということになりがちだと思うが、この本は下世話な面と問題提起の面のバランスがよく、真面目っぽい本なのに一気に読める本となっている。これはたくさんの本を上梓してきた中村さんの力量ということだろう。貧困は制度の問題が大きい、介護業界は未来ある若者が働く場所ではないなど重い言葉が多い。