ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2021年7月・8月に読んだ本(2021年8月30日更新)



でぶぶの読んだ本考察|2021年7月・8月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・ 月蝕島の魔物
作者・田中芳樹
出版社・創元推理文庫
評価・7点

ヴィクトリア朝怪奇冒険譚三部作とやらの第一作。近年の筆力絶賛劣化中の田中氏の作品群の中ではまともな部類である。19世紀のイギリスが舞台の冒険譚でところどころに氏の好きな歴史豆知識が挿入される。貸本屋(出版社)で働くクリミア戦争の帰還兵ニーダムと姪のメープルが、大物作家アンデルセンとディケンズにふりまわされるうちに事件に巻き込まれるのだが、古きよき物語という感じで非常に安心して読める。近年の惨状を見る限り、今の田中氏の筆力であれば歴史モノや本作のような歴史に絡めた作品を書くほかないと思うのだが、いかがだろうか・・・。



書名・髑髏城の花嫁
作者・田中芳樹
出版社・創元推理文庫
評価・6点

ヴィクトリア朝怪奇冒険譚三部作とやらの第二作。前作に続きニーダムと姪のメープルのコンビが主役(青年と少女というのは田中芳樹の多用するコンビである)。そして前作に続き冒険、化け物、歴史的豆知識がぶちこまれてなかなかにバランスは悪いが良い物語になっておる。近年の田中氏の作品の中では読む価値あり。



書名・水晶宮の死神
作者・田中芳樹
出版社・創元推理文庫
評価・5点

ヴィクトリア朝怪奇冒険譚三部作とやらの完結編。相変わらずニーダムと姪のメープルのコンビが化け物騒ぎに巻き込まれる感じ。近年の田中氏の作品にしては悪くはないが、巻ごとに勢いが落ちていった観がある。



書名・天子蒙塵 全4冊
作者・浅田次郎
出版社・講談社文庫
評価・7点

蒼穹の昴から続く中国歴史ロマン超大河小説。前シリーズの主人公だった張作霖爆殺から5年が経過、北京、天津、東北など中国北部を舞台に物語の幕が上がる。相変わらずの 浅田節の群像劇で溥儀、張学良などが生き生きと描かれる。永田鉄山、石原完爾など日本史の大物も続々と登場し浅田流の歴史評価(人物評価)も興味深い。ただし、この天子蒙塵4冊をもってしても物語の収拾はついておらずさらに続きそうである(笑)一体いつまで続くのか次のシリーズで終わりになるのだろうか・・・。



書名・崩壊する介護現場
作者・中村淳彦
出版社・ベスト新書
評価・6点

風俗モノのルポなどで名高い著者の介護現場ルポ。はじめて知ったが中村さんはルポライターをしながら介護施設の経営もされていたのだ。ルポライター、介護施設経営者という立場からきれい事一切なしで書かれた本ルポは読み応え十分である。介護の現場がここまで破綻寸前(破綻している、とも言えるかもしれない)だとは・・・。





書名・名前のない女たち ベストセレクション
作者・中村淳彦
出版社・宝島SUGOI文庫
評価・6点

名前のない女たちシリーズから傑作を厳選収録したものらしい。このシリーズはAV女優とか風俗嬢のインタビュー集だったと思うのだが、本作は厳選収録されただけあった登場するキャラが濃い(笑)とても共感はできないが、世界は色々な人で構成されているんだなぁ、と己の知らぬ世界に思いを馳せることはできるかもしれない・・・



書名・「太平洋の巨鷲」山本五十六
作者・大木毅
出版社・角川新書
評価・5点

ドイツ軍関連の本で毀誉褒貶の激しい大木さんの太平洋戦争モノ。大木さんらしい辛口で楽しい本を期待していたのだが、何とも普通の出来である。用兵思想からみた真価との副題であったが、(一般の伝記に比べれば軍事面を重視しているもの)山本の生涯をなぞっただけのようにも感じた。決してつまらないわけではないのだが、この出来映えならばあえて大木さんが書くこともあるまい、という感じである。



書名・頼子のために
作者・法月綸太郎
出版社・講談社文庫
評価・7点

再読。法月さん初読者におすすめ。法月さんの著作の中ではかなりとっつきやすい部類だと思う。東野圭吾の「悪意」と同テイストの作品だが時系列的にはこちらが本家本元である。



書名・ぼくにはこれしかなかった
作者・早坂大輔
出版社・木楽舎
評価・7点

作者は盛岡の小さな古本屋さんの店主で、自身が会社を辞めてから古本屋を開き軌道にのせるまでを書いた自伝的な作品である。文章は読みやすいし、分量もちょうど良いくらいで私は「いい本だな」と思った。けど賛否両論を呼びそうな本だなとも思う。小説のように綺麗綺麗な文章で書こうとしているので、何となく既視感があり、偽善的でもある。村上春樹とか本多孝好もどきと言われればそんな感じもする。ただ、早坂氏の言う自分の店(自分の店で取り扱う本)にストーリーを与えるというのは十分成功しているように見える。友人との軋轢や妻との離婚や女遍歴などナニワ金融道のように率直にドロドロに書いても、店にストーリーを与えることにはならんだろうから、地方都市のお洒落な古本屋のストーリーとしては、(この本は)早坂氏のこの文体・内容で良いのだろう。



書名・兇人邸の殺人
作者・今村昌弘
出版社・東京創元社
評価・6点

屍人荘の殺人から続く、葉村と比留子さんシリーズ3作目。相変わらずの斑目機関であり、特殊設定のミステリである。最初に記載されている屋敷の見取り図はワクワクするし、エンタメ作品としては非常に読みやすいのもよい。しかし、本格ミステリとしては少しカタルシスが弱めかと思う。全体としては、「悪くはないが一作目を超えれていない」という印象である。ただし、独特の魅力のあるシリーズなので4作目も読むと思う。



書名・フーガはユーガ  
作者・伊坂幸太郎
出版社・実業之日本社
評価・5点

風我と優我の双子の(超能力)兄弟の物語。物語自体は悪くはないのだが、深刻な物語を深刻でないように語る伊坂節がこの物語ではあんまり機能していないような気がした(あえてそういうふうに書いたのかもしれないが)。