ホーム>でぶぶの読んだ本考察>2023年1・2月に読んだ本(2023年4月3日更新)



でぶぶの読んだ本考察|2023年1・2月に!読破!した本


「でぶぶの読んだ本考察」は本サイト管理人でぶぶの小学生の読書感想文以下のテキトーな考察です!独断と偏見で読んだ本を評価(10点満点)までしちゃうよ!ちょっと辛口かもしれません・・・。

※「ネタバレ」があるかもです!「ネタバレ」が絶対に嫌な方はこれ以上読み進めないように!



書名・デス・ゾーン
作者・河野啓
出版社・集英社文庫
評価8点

「登山家」栗城史多のエベレスト挑戦を追ったノンフィクション。七大陸最高峰単独無酸素登頂をかかげメディアで一世を風靡した栗城氏。世間的にはテレビ映えする一流の若手登山家と受け止められていたが、登山業界の玄人たちからは胡散臭い人物と見られていた(登山家としては3.5流、と評した有名登山家もいた)。かつてテレビ局の人間として栗城氏を取材した著者が栗城氏の死語に生前の栗城氏の足跡を調べ直したのが本書である。賛否両論の本書だが「読ませる」「面白い」のは間違いない。それは著者のノンフィクションライターとしての実力はもちろんだが、栗城史多という登山界に前例のないトリックスターだ題材だからに他ならない。栗城氏という矛盾と魅力、稚気に満ちた人間は非常に興味深い。登山に少しでも興味があったり、登山関連の作品(映画、漫画、小説など)を一度でも興味を持って読んだ人なら本書を楽しめるはずである。



書名・完全犯罪の恋
作者・田中慎弥
出版社・講談社文庫
評価・3点

「共喰い」で芥川賞をとった田中さんの私小説っぽい内容。高校時代(下関)の恋人の娘と東京で邂逅する、そして田中氏の過去が語られるという内容だが期待ほどではなかった。正直読了するのにはパワーが必要だった。



書名・エンタメ小説家の失敗学 売れなければ終わりの修羅の道
作者・平山瑞穂
出版社・光文社新書
評価・8点

小説家が自らのデビューから現在(崖っぷち)に至るまでを書いたノンフィクション。これを書いた「平山瑞穂」という人選が何とも絶妙である。そこそこ売れたこともある(私も3冊ほど読んだことがある)、文章も読みやすくてそこそこリーダビリティもある、でも売れっ子になるには何か足りない、という感じの作家だった。そんな作家が自作の内容や売れ行きをもとに売れる小説について考察するのだから面白くないわけがない。最近多い作家になるためのハウツー本ではなく、作家人生、売れる小説に関する考察本(読み物)という感じの内容である。ただ、平山さんのどの小説よりこの本のほうが面白かったというのはある意味問題であろう。



書名・傲慢と善良
作者・辻村深月
出版社・朝日文庫
評価・8点

マッチングアプリで知り合った西澤架(男)の婚約者が失踪する。婚約者を探すために西澤が婚約者の過去と向き合うのだが・・・、といった感じで物語がはじまる(マッチングアプリで婚活している男女という今時の設定の話である)。かつて読んだ宮部みゆきの火車にも劣らぬ展開と文章力か、と思っていたが終盤の展開はちょっとがっかり(今の辻村深月の実力ならもっと良い閉じ方が出来たのではないかと思う)。とはいえ終盤までは「9点をつけようか」と思わせたリーダビリティ文章力は、辻村深月がエンタメ作家として充実期にある証左ではなかろうか。



書名・破局
作者・遠野遥
出版社・河出書房出版社
評価・3点

芥川賞受賞作。うぅん面白いのだろうかこれ・・・読みやすいことは読みやすいのだが・・・。何というかラグビーと筋トレとセックスを客観的にやってる小説。







署名・残照
作者・田中芳樹
出版社・祥伝社
評価・5点

田中芳樹久しぶりの歴史小説(多分蘭陵王以来か?)。モンゴル帝国に使えた漢人武将・郭侃を描く長編。田中氏のエッセイ?中国武将列伝でも推していた武将なのでずっと前から書きたかったのだろう。興味深く読ませてもらったが、やはり田中氏の作家としての能力はかなり減退している。他の作家が書かない興味深い時代・人物を扱っているので読ませられることは読ませられるのだが、往年の田中氏の小説に比べればまるで勢いはない(まず主人公の郭侃が魅力的に書けていない)。ところどころにかつての田中氏を偲ばせる残滓は感じるのだが、物語全体をつなぎ合わせる悪力のようなものがなくなってしまったようだ。ただし、近年の田中氏の現代小説やファンタジーに比べればマシなので(というようり価値があると思うので)、今後は歴史小説中心の執筆活動をしていただきたい(田中氏の中国歴史小説ならつまらなくてもハードカバーで買う)。



書名・覇王の譜
作者・橋本長道
出版社・新潮文庫
評価・8点

将棋王道エンタメ小説。文句なく面白い。著者には「サラの柔らかな香車」「サラは銀の涙を探しに」などの将棋小説の佳作があったが、本作はさらにパワーアップしており将棋エンタメ小説としてほとんど文句のない出来である。ただ惜しむらくはある程度将棋・将棋界についての知識がないと本作を十全に楽しめない点である(アマチュア1級、初段以上程度の人間なら文句なしに楽しめると思う)。



書名・それでも俺は妻としたい
作者・足立紳
出版社・新潮社
評価・9点

40歳で年収50万円の脚本家?の俺。それでも俺は妻のチカ(普通に働いており家計を支えている)とセックスがしたい。風俗に行く金もないので妻とセックスをするためにしょうもない努力は惜しまない俺(本質的な努力はしない)、小説と謳っているが多分ほぼ実話(笑)。筋書きを書いただけでしょうもないことこの上ないのだが、なかなかどうして人間の本質に迫る傑作である(ただしゴミでもある)。



書名・自転しながら公転する
作者・山本文緒
出版社・新潮文庫
評価・6点

タイトルは秀逸だと思う。東京から実家のある田舎とも都会とも言えない街に戻ってきた32歳の女性が、その街のアウトレットモールで契約社員として働きながら直面する恋愛、仕事、家族の問題を描写する。なかなか達者な作品で私が女性であればさらに共感できて7点や8点をつけたかもしれない。30代の女性におすすめの作品である。